『古屋の次第』(2008)

大阪芸術大学の知人(先輩)の監督作品で卒業制作。

直接的な意味を持ちすぎる言葉の反復が多すぎるのではないかと思った。そもそもタイトルからして観客は否応なく「古屋」を意識し、冒頭で登場した銃がどう動く存在なのかを思考し続けるのだから、前面にだすべきではない(というかうちは出さない方が好き)。
銃の位置が上下してみたらもっと面白くなるような気がした。日常でそう登場するものじゃない銃が冒頭から現れると、自主映画ましてや学生映画の中で非日常的なリアリティーを持ち出すのはすごく難しいことだと思うので、映画内部の人物らにとってそれがどう捉えられるのかが描かれることにすごい期待してしまうし、もともと強力な意味を持つ主題であるから、その動きにはすごく敏感になってしまう。(だからキャバクラの店長がやたら銃をなでまわす辺りは少し邪魔くさい気がする。)
だからこそ、説明もないままに「銃」という被写体として70分もたせるには少し厳しい、ので、例えば主人公にとっての銃との出会いは「あこがれ」、次に少女のセリフ「人を殺すのって案外簡単だね」から、弾の数を意識させていたのをやめて、あまりに多い弾の数によってその1発毎の重要性、さらには主人公らが銃を持つことによって得たはずの優越感みたいなものを剥奪してしまう、そして終盤、今まで少女を苦しめ、そのことによって主人公をさえ苦しめ続けてきた元凶である気狂いの男を撃ち殺すとき再び銃をもつことの重大さが浮き彫りにされる、その結論としての最後の銃弾、・・・とかそんな感じだとうちは嬉しかった。

監督が知っている人である分ものすごく批判的にみていたので悪口ばかりが浮かんでしまうけれど、ショットがひとつひとつ丁寧に撮られており観やすかった。特に帰宅した主人公が母親をさがすシーンでは、部屋の構造がまるでわからなく、向こう側に消えた主人公が当たり前にこちら側に顔を出しあちら側に去っていく、その軽がるとした唐突さが良かった。そして一番ぐっときたのは、これまた何屋なのかよくわからない(おそらく金物屋?)で強盗を仕掛ける主人公らに金を詰めるアルバイト店員の無気力で曖昧な表情、よく捉えたなあと感動した。あのシーンは感情移入と滑稽さを同時に呼び起こしてしまえるリアリティーを孕んでいる。と思う。読み取ることのできない店員の内情をクイズにしていたともいえるような、こっそり捉えられた非常ボタン、パトカーのサイレン、ものすごく素晴らしかった。