『ビッグ・トラブル』(1986)

シンプルな省略。丸見えピーター・フォークの明らかな変装をロングショットで軽々と捉えた後の、背中越しにカメラを置き知らぬ顔を決めた出し惜しみによるサービス。それを見ている主人公の表情、この部分の一見非常にもったいぶったアプローチにくすぐられる。観客はどこを見ているのか、何に気付き何を予想し期待しているのか、そのすべてを熟知し計画通りに情報をこぼしていく。そして金庫を破壊する際のオモチャような感覚、アスベストに包まれた二人はもう許しを得ている。奥から現れた主人公の視点の先/手前のフレーム外への視線の動き、心の動き、理解、十分に時間をおいてなお突如として現れるテロリストのクロースアップ。軽快さ、ラストの不快な心地よさ、何度見ても素晴らしい。