『女優霊』(1995)

おとつい・昨日と映画合宿行ってた。めちゃんこ楽しかった。
合宿とか行くと帰ってからしばらく異常にさびしいから嫌い。この落差は地獄だ。

『女優霊』(1995)
【日本・76分】
監督:中田秀夫
原案:中田秀夫
脚本:高橋洋
出演:柳ユーレイ

うまい。演出がめちゃうまい。“鏡”はもちろんのこと、姉と妹を同じショットに並べ対比させるのが目立つ。ロケシーンでの、姉が何かを見ている・姉を見ている妹が姉の視線の先を追いそれに手をふる・同時に後ろの窓に幽霊が見える、この一連にゾクゾクした。“視線”が怖かった。カメラが何度もこちらに向けられ、見ている側の我々に危機感を与えるというか・・・映画の中に登場するフィルムの女もこちら側を見ているし、観客の後ろ側を見ているようで怖い。
ラスト、幽霊丸見え。あの丸見えの、笑いとすれすれの怖さ。『回路』も良かったなあ。


『M/OTHER』(1999)
監督:諏訪敦彦
製作:仙頭武則
脚本:諏訪敦彦/三浦友和/渡辺真起子

長かった。説得力に欠ける。今となると、カサヴェテスを意識してるのがめちゃ伝わってくるけど力不足な気が。ドキュメンタリー調の中に不自然なものを組み入れることによって何か変なことをやろうとし、不快感を生もうとしてるようだけど、あまり・・・。
『2デュオ』は良かったけど。

しこたま感動したのは、母/他人の境界を表す窓。
窓際でブロック遊びをしている息子・俊介と、その手前にある鏡に映るアキ(渡辺真起子)と哲郎(三浦友和)、しばらくするとアキが屋内に入り俊介と同じ空間に立つが、俊介は窓という仕切りを隔てた実の父・哲郎の方を向き、隔ての無いアキとは“他人”である。
また、留守番をすることになったアキと俊介が洗濯物を干していると、俊介の実の母から電話がかかってくる。ここでも、電話という隔てのある俊介と母親は親子であり、隔ての無いアキとは“他人”である。
そして、物語の中盤、部屋を探すアキがベランダの窓を見つめていると哲郎から電話がかかってくる、(屋内には他人がおり、)ここでやっと隔てを得たアキは哲郎と他人の境界を越えることができ、電話を代わった俊介とも同じく“他人”ではなくなる。

ラスト、ファミレスで哲郎と話し合うアキに俊介から電話がかかってくる。通話口からは俊介とその傍で口出しをする実の母親の声が聞こえる。ここでもアキは隔てを得ることができるのである。


少しずつ、着実に“他人”ではなくなり、それに安心しきっている哲郎に対しアキは不安をぶちまける。・・・・でもそこのシーンの説明的な感じはあまり好きではない。「奥さんは上手くやれてたの?私にはできないの?」と、内面の理由付けをし自身の不安感を正当化しようとするリアリティーは一方では理解できるものの、わざとらしさがぬぐいきれていなかった。あと、哲郎の息子への会話があまりにも当たり障りない感じがして、子役への気遣いを意識してしまい、冷めた。

終盤、出て行こうとする理由をしつこく尋ねる哲郎に対してのアキの「理由なんかない」というある種の矛盾はよかった。

不快感も快感も昇華しきれていない感じがして、生焼けな印象。
即興の、「一見無意味な会話」のあまりの無意味さに147分を費やすのはあまりにも長く退屈だった。短くするかエピソードに色づけするかアクションを増やすか、観客へのアプローチがもう少し必要な気がしました。