デヴィッド・フィンチャー

『セブン』(1995)
SE7EN

セブン [DVD]

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【126分/アメリカ】

監督: デヴィッド・フィンチャー
製作: アーノルド・コペルソン、フィリス・カーライル
脚本: アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー
撮影: ダリウス・コンジ
出演: ブラッド・ピットモーガン・フリーマングウィネス・パルトロー、ジョン・C・マッギンレー

謎に包まれていた犯人が、刑事とともに「死体」を隠したとされる場所へ向かう車内で突如として饒舌になるのだが、そのシーンが異常に長い。
その中で、ほとんど同じショットを一定の速度で切り替える画面の単調さは、しゃべればしゃべるほどに「謎めいた恐怖」を打ち消してしまう犯人を、狂気に満ちた異常者から刑事と同じ目線に立つ1人の一般人へと変化させてしまう。
犯人の意図が明白化した途端に映画が終わるという明快な終幕を前にして、「意図」を隠した犯人の人間味を表面化させるこの長いシーンは、
めまぐるしくスタイリッシュなフィンチャーの映像にあっては、その単調さが目立つばかりか、一身に「謎解き」へと突き進んできた映画全体のリズムを破壊してすらいるのではないか?
脚本は非常に面白いと思うが、何かバランスの悪い印象を受けてしまった。



『ゾディアック』(2006)
ZODIAC

ゾディアック 特別版 [DVD]

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アメリカ/157分】

監督: デヴィッド・フィンチャー
原作: ロバート・グレイスミス
脚本: ジェームズ・ヴァンダービルト
出演: ジェイク・ギレンホールマーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr、アンソニー・エドワーズ

実際にあった事件を元にしているからなのだろうけど、映画の中盤まで
物語を語る視点の軸がぶれまくっている。だから、もともと交錯している物語そのものが頭に入らず、理解が追いつかない(うちだけかな?)
ロバート・ダウニー・Jrが戦線を離脱してからようやくジェイク・ギレンホールに視点が定まったという印象を受けた。
でも、それから後は、約30年の時間を飛び越えてしまう強引さと、時の流れを視覚的に説明する簡素さがあっぱれで楽しい。
ジェイク・ギレンホールが事件の調査にハマっていくに連れて、だんだん顔中ヒゲに覆われていったあげく奥さんに愛想をつかされるなんてわかりやすすぎる!
そんな風に、サスペンスが大きな基盤になってはいるものの、コメディーを交えたチープな雰囲気が笑えるので2時間半という長い時間も耐え抜ける。さらに、明らかにならないままに取り残された「事実」が、映画に華を添えている。
ひまでひまで仕方がない湿っぽい雨の日にもう一回見たくなりそう。
(ていうか映画って、そういう日に見た作品の方が「名作」を見た気になりそう。)


デヴィッド・フィンチャーデヴィッド・クローネンバーグだったら
絶対クローネンバーグの方が好きだろうな。