『フルメタル・ジャケット』(1987)

フルメタル・ジャケット』(1987)
FULL METAL JACKET
アメリカ・116分】

フルメタル・ジャケット [DVD]

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監督: スタンリー・キューブリック
製作: スタンリー・キューブリック
製作補: マイケル・ハー
製作総指揮: ヤン・ハーラン
原作: グスタフ・ハスフォード
脚本: スタンリー・キューブリックマイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード
撮影: ダグラス・ミルサム、プロダクションデザイン: アントン・ファースト
美術: キース・ペイン、 ロッド・ストラットフォード 、 レス・トムキンス
衣装デザイン: キース・デニー
編集: マーティン・ハンター
キャスティング: レオン・ヴィタリ
音楽: アビゲイル・ミード
出演: マシュー・モディーン (ジョーカー)、アダム・ボールドウィン (アニマル・マザー)、 ヴィンセント・ドノフリオ (パイル)




戦争なんて、シット!調教されて狂った兵士はミッキー・マウスのような偶像!
手持ちカメラの、インタビューの、パレードの、そして兵士たちの身体すらも、すべてが擬似リアリズムに満ちている。
主人公はカメラにピースし、それを見ている観客は、見られていることに気付かない。
最近、映画がどーのこーのということよりも、
その映画がこの世でどう生き延びるのか、ということの方が大切な気がして、テクストなんか、カメラなんかどうでもいい。

ダニス・タノヴィッチ『ノー・マンズ・ランド』という作品は、
そういった分析もどこかバカらしくなってしまうような、
素晴らしい映画だ。

ノー・マンズ・ランド [DVD]

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ラスト、一人残されたツェラは、見捨てられたボスニア紛争そのものの表象となる。
そして、彼はただ、ともに残されたカメラをみつめる。
観客は、その瞬間、傍観者であることを自覚させられる。
あの映画に主人公はいない。
語りべは監督だが、その姿は見えない。
兵士の無名性。
戦争の表象が、主観性なしにはほとんど不可能であるという逆説に
あの映画は反旗を翻している。
きっと、そう思う。