『稲田の草庵』(1922)

監督:沼田紅緑
主演:井上金太郎、内田吐夢
【日本・37分】

布教にやってきた親鸞聖人は稲田の地に念仏道場を開く。平次郎の妻は念仏嫌いの夫に隠れて信仰したいと親鸞に相談する。親鸞は彼女がいつでも念仏を唱えられるよう特別な巻物を授ける。夜、夫が眠ったのを見計らって妻は巻物を取り出し小声で唱える。ふと目を覚ました平次郎は、それを見て怒り、翌日、藪の中で妻を殺めてしまう。しかし、帰宅するとさっき殺めたはずの妻がいる。驚いた平次郎が自分のしたことを告白すると、妻は巻物がなくなっていることに気付く。二人が藪の中へ行ってみると、さっき隠したはずの妻の死体はなく、代わりに親鸞の巻物が真二つに切り裂かれ落ちていた。
同じ頃、親鸞の人気で落ちぶれてしまった●●が、親鸞を殺そうと山道で待ち伏せしている。それを察した親鸞と弟子は妖術で彼らの目を欺き逃げ切ろうとするが、ついに追いつかれてしまう。今にも親鸞に切りかかろうとする●●らに対し、親鸞は弟子を制して進み出る。何も言わずただただ自分たちを見つめる親鸞に、●●らは身動きがとれなくなる。
数日後、改心した平次郎、●●らは親鸞の弟子となり村人らとともに草庵に集まり念仏を唱える。

時代が変わって、稲田の草庵周辺には電柱が張りめぐらされ、雨合羽に自転車で行き来する人々が見える。1920年代、当時の現代である。カメラは寺院に集まる人々や石碑、そして草庵を捉える。親鸞が稲田の地に移り住んでから何百年もたった今でも、彼の教えはさまざまな形で残り、語り継がれているのである。