『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』(2009)

ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』(2009)

【日本・114分】

「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」公式シネマ鑑賞読本

「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」公式シネマ鑑賞読本

監督: 根岸吉太郎
原作: 太宰治
脚本: 田中陽造
撮影: 柴主高秀
出演: 松たか子浅野忠信室井滋伊武雅刀広末涼子妻夫木聡堤真一光石研山本未來鈴木卓爾、小林麻子、信太昌之、新井浩文

明らかに俳優と配役の年齢の差が開きすぎているにもかかわらず、それに有無を言わせない説得力が備わっている。なにより、「太宰節」を損なうことなく活かしていた田中陽三と、ショッキングな編集、かっこよすぎる浅野忠信が素晴らしい!
クロースアップが活かされた作品なので、映画館で観るべき。
DVDなんかじゃもったいない。



『空気人形』(2009)

ゴーダ哲学堂空気人形 (ビッグコミックススペシャル)

ゴーダ哲学堂空気人形 (ビッグコミックススペシャル)

【日本・116分】

監督: 是枝裕和
原作: 業田良家 『空気人形』(小学館刊『ゴーダ哲学堂 空気人形』所収)
脚本: 是枝裕和
撮影: リー・ピンビン
編集: 是枝裕和
出演: ペ・ドゥナARATA板尾創路、高橋昌也、余貴美子岩松了

誰がみても失敗作。(イメージビデオ?)
原作のマンガであれば、絵のタッチやコマ割などで伝えることができていたであろうその世界の中のルール、いわゆる「ジャンル」の世界観を、説明しそこなっている。ペ・ドゥナを用いることで描き出せていたその無垢で特異な存在である“空気人形”を、周囲の人物たちがどのように対処するのか、そこの軸が常にぶれ続けている。ペ・ドゥナ自身は“人形”であるという正体がばれないようファンデーションを塗ってみたり、人間を観察したりするのだが、それを観客に執拗に強調するにもかかわらず、周囲の人物はペ・ドゥナの正体を知ってもさして驚きはしない。ましてや、いつも側にいて彼女を見つめ続けているはずの板尾創路は、明らかにペ・ドゥナの人間の姿への変化に気が付かないにもかかわらず、ついに彼女が彼に話しかけたとき、彼は多少驚くばかりで、「なぜ」なのかを正当に尋ねようとはしない。もし逆に「空気人形」が心を持つことは、この映画内部では「不思議」ではないというファンタジーを描きたいのならば、ARATAとのデートや、レンタルビデオ店でのリアルさの強調は逆効果なはずだ。(しかも物語を遅延させすぎてる。)
もはやスクリーンの中に感情移入できる対象などいない。
それで「もたせる」には、あまりに陳腐すぎる作品だった。