『崖の上のポニョ』(2008)

またカサヴェテスのDVDをオークションで落札できませんでした。1分前までは最高落札者だったのに。『ミニー&モスコウィッツ』のDVDが9月に出るというのはデマでしょうか。
撮影途中の作品の脚本書いてます。前の脚本のまま完成にしてしまう自信がなくて。書いてるけど、自己満足におちいりそうになったり、本当に自分はこの作品を撮りたいのだろうかと悩んで、見失って、ぜんぜん進みません。時間と手間をかけてみよう。今まで撮った作品は、「撮りたい」という瞬発力のみで書いて撮って、後からげんなりすることが多かったから。今回は脚本を用意周到にして、じっくりワーッと撮影してみよう。
自分って才能ないなあと脱力しまくり、ほったらかしてた「映画の授業」読んだら高橋洋が「どれだけアクションできるかだ」って書いてるのに元気もらってそれだけで生きてます。死にたくない!


崖の上のポニョ サウンドトラック

崖の上のポニョ サウンドトラック

崖の上のポニョ』(2008)[m:179]TOHOシネマズ梅田にて
【日本・101分】
監督:宮崎駿
脚本:宮崎駿
原作:宮崎駿
声優:山口智子/長嶋一茂/天海祐希/所ジョージ


宮崎駿に騙された。最高でした。冒頭からつかみどころがなく、ポニョが海上にでてきて人間があらわれてようやく現実世界が見えてくるのだけど、物語の世界観が全く見えてこず、アニメの背景もある種いいかげんで、なにがなんだかわからない。ポニョの生みの親・藤本が“魔法”という言葉をつかったところでようやく世界観が構築される。なんでもありの世界なのだと。なんでもありとわかった以上そのすべてを受け入れるしかない、その姿勢にさせてしまえばあとは駿のやりたい放題。そもそも“ポニョ”だなんて子供向けらしく銘打ち、セリフもことごとく単純化することで、観客の敷居をものすごく低く設定させておいてこんな残酷で恐ろしいことをやるなんて・・・まさに駿にもてあそばれた。


叫 プレミアム・エディション [DVD]

叫 プレミアム・エディション [DVD]

『叫』(2006)
【日本・104分】
監督:黒沢清
脚本:黒沢清
プロデューサー:一瀬隆重

なんだか無性に清が観たい。5ヶ月ぶりに再見。
東京でみたときは最高傑作かもしれないと思ったけど、おととい『ドッペルゲンガー』をみてからだと、いまひとつのような気もする。だけど、すれすれのところで掴みどころがなくて、視覚的な“丸見え”のおぞましさがたまらない。今回みてみて、役所広司に殺されかけた奥貫薫が逃げ出しながら叫び声をあげるのだけど、その声が響き渡るでもなく短くブツ切りになっていて気持ち悪い違和感を覚えた。あと、人物の関係性・生活感がほとんど見えないと思った。挨拶なしに唐突にあらわれるオダギリジョー加瀬亮その他はなにやら奇妙なのだけどそれを教えてはくれない。湾岸地帯で切り捨てられた過去を忘れていく人々、無視する人々に怒る赤い服の女、その悲しみに向き合った吉岡は許される。許された吉岡は、現実にとどまりながら情けなくも罪をつぐなおうとする(カットされたラストシーンより)。『アカルイミライ』『ニンゲン合格』などと同じく、“許す”側と“許される”側の関係が血のつながりのある親子ではなく、全くの他人であることが興味ぶかい。



『季節のはざまで』(1992)
原題:HORS SAISON ZWISCHENSAISON OFF SEASON
【スイス/ドイツ/フランス・95分】
監督:ダニエル・シュミット
脚本:ダニエル・シュミット/マルティン・ステール
撮影:レナート・ベルタ
音楽:ペール・ラーベン
出演:サミー・フレイ/カルロス・デヴェーザ/アリエル・ドンバール

他のシュミット作品もそうだけど、マジメーな雰囲気の中で突如として挿し込まれるおかしさが、なかなか着いていきづらくて好き。ただ、寝ずには見られないのはなぜだろう。 子供に話して聞かせる大人の、子供騙しの言葉のいちいちが、いずれはばれてしまうけど今はちゃんと嘘をついてあげる様子が、素晴らしく感動的でした。



『罠』(1949)
原題:THE SET-UP
アメリカ72分】
監督:ロバート・ワイズ
原作:ジョゼフ・M・マーチ
脚本:アート・コーン
撮影:ミルトン・クラスナー
出演:ロバート・ライアン/オードリー・トッター/ジョージ・トビアス

現実時間(上映時間72分)と映画内部の時間を一致させた作品。長回しではなく、シーンの行為すべてがつながるように細工してある。ボクシングの試合の合間にそれを観ている観客の描写がはさみこまれ、それだけで観客らのキャラクターが把握できるように(いうなれば単純化)している。編集作業か介されているとはいえ、観ているうちに同時間を生き、感情移入させられる。ストーリーは、連敗続きの老ボクサーが賭けのダシに使われ、それに抗おうとし、試合に勝利したせいでギャングらの暴行に遭い選手生命を奪われるが、自分は試合に勝利したのだという喜びをかみしめる、というただそれだけなのだけれど、バカバカしいとさえ思えそうなただそれだけのラストに、ものすごく力を感じた。演出力だと思う。